2014年8月25日月曜日

「土砂災害調査マニュアル」

私が新人の頃、以下の3冊は座右にありました。上司にも薦められました。地表・地質踏査、スケッチの経験豊富な方々が現場経験と実例に基づいて書いておられるから、災害の原因となる地形変化がどのような背景で起こるのか、臨場感があって理解しやすいものでした。

土砂災害に関わる調査方法として災害履歴調査・文献調査が説明され、巻末には災害年表も掲載されています。

今回も「雨量」「被害」「硬い堆積岩でさえ、、、」等、いかにも”未曽有”であるかのような言葉がとびかっていますが、これらの本を読むと、いずれもそうではないことがわかります。

もうこの三冊ともネットでも入手しにくい状態です。「土砂災害調査マニュアル」で検索すると基礎調査のマニュアルが多くヒットします。三冊ともPCがパーソナルなものとは言えなかった80年代の出版で今の新人が生まれる前ですが、伝えるべきことがこういうところからも見えてくる気がします。

2014年8月20日水曜日

地すべり学会にて 

平成23年もそうでしたが、大規模な土砂災害が地すべり学会と同じタイミングで起こってしまいました。現時点でまだ広島の被害全容はつかめていないようで、大変なことになっています。

今日は地すべり学会で、きいすとんの方に出会いました。きいすとんと言えばロープアクセスですが、私は成果品の鮮やかさと想像力あふれる表現力が気に入っています。

最近は「記録的」「経験のないような」「数十年に一度の災害になる可能性のある」云々と、災害史(そして”誌”)を知っとるのかいなといいたくなるような表現が続きます。

その土地の地形に記録される規模の土砂移動は、100年以上のスパンがあることも少なくありません。2009年山口県の防府土石流災害で、ひとつ古い時期の土壌の年代は500~600年前だったと聞いています。が、そういう地形を地形判読で沖積錐や崖錐と分類して、崩災や土石流は十分ありうることとして説明してきました。

応用地形判読図を作っている立場からいうと、図面に表現するということは想像力のいる作業です。沖積錐の範囲をひくにあたっても、雨量観測値として記録的であったであろう、数十~数百年前の出水時にどんな土石流が出たのか、想像しなながら書くのです。時に瀬戸内海すらなかった最終氷期の状況も思い浮かべます。道一本はさむわずかな比高が段丘面(離水面)だったりして、災害という意味では明暗を分けます。

10年前に設置した雨量計が最大値を更新したからといって記録的と騒ぐよりは、知的生産力があがります。