2014年7月22日火曜日

地形判読のメリット - 応用地形判読士雑感 0次谷問題 特徴をふたつ!? 2

 0 次谷で特に生じやすい土砂災害形態について二つ挙げ、それぞれについて それぞれについて それぞれについて地形・地質調査における留意点について述べよ

 ①谷頭凹地からの土砂崩落・土石流
 0 次谷で発生しやすい土砂災害形態は、斜面表層の堆積土砂(崩積土、匍行土砂)の内
部あるいは基底にせん断破壊が発生し、土砂が急激に落下・流出すること伴う表層崩壊
及び土石流の発生である。
  0 次谷の地形調査における留意点として、抽出する地形図の精度及び縮尺があげられる。
広域的な調査では、縮尺 1:25,000 地形図によって抽出し、詳細な調査では建物の実形が表現可能な縮尺 1:5,000 以上の縮尺の地形図を用いて、地下水や斜面物質の移動量・落水線等の地形諸元の精度向上を図る。
 0 次谷における地質調査としては、動的簡易コーン貫入試験や土層強度検査棒等の簡便な調査手法によって、表土層の厚さの空間分布を計測する方法があげられる。ただし、直線型の谷壁斜面や基盤岩の浅い部分など土砂崩落の可能性の低い箇所を避けることに留意し、電気探査や空中電磁探査等の手法で地下水位の分布状況等を把握しておくことも有効である。

 ②深層崩壊危険斜面・地すべり地形の不安定化
 地すべりや重力変形等の影響により膨出型の斜面側部の侵食谷の谷頭部に該当する箇所では、崩壊地上部の亀裂・段差や崩落崖の後退に留意しておく必要がある。また、断層や節理面など、岩盤の広域的な破砕を示唆する地質的弱線にそった差別削剥地形と重複する地形場では、リニアメントの規模や分布密度等を広域に判読しておく必要がある。

ふたつめはかなり苦しまぎれです。

地形判読のメリット - 応用地形判読士雑感 0次谷問題 特徴をふたつ!?

 特徴を“ふたつ上げる”ことが個人的には難しい問題と思いました。最も植生に覆われやすい地形種でもあるので、航空レーザー計測の効果が高く、その意味では”発見”が多い要素でもあります。さて、、、、、、、、、

 0 次谷の地形発達メカニズムについて メカニズムについて、その他の山地斜面との違いに着目して説明せよ

 ということでしたが、私なりに考えて見ますと

 ここでは 0 次谷と1次谷以上の水系網における地形発達を比較して述べる。
0 次谷は周辺の谷壁斜面の表層や凹地内の土砂が下方に匍行して堆積する場であり、降水は伏流するため地表流は発生しにくい。ただし、難透水層や基盤岩が地表付近に存在するため雨水が飽和しやすく、パイピングを伴って土砂や岩屑とともに湧出することで表層崩壊が発生し、河谷地形発達の起点となる。1次谷以上の河谷では V 字状の横断形を呈することが多く、下方・側方侵食により線的な侵食が発生し、土石流の発生・流下区間となる。

 ということになりましょうか。この設問の答えとして、地すべりや深層崩壊といった大規模な土砂移動の発生場と比較することも考えてもみましたが、水系網の中での特質を強調するために、上述のような答えがふさわしいと思いました。

2014年7月20日日曜日

地形判読のメリット - 扇状地判読の勘所 応用地形判読士雑感(5)

この設問は、鈴木先生の読図入門第 2 巻「低地」の 298~304 頁の文章を要約せよ、という「国語の問題」として出題しても同じ答えになるほど、設問と 298~304 頁の項節の文言が一致している。問題の作り方として安易に過ぎないだろうか。

扇状地地形の判読の“勘所”は(比較的小~中型の)合成扇状地の新旧地形面の交叉と土砂移動形態の差違にあります。このためには、縮尺 25,000 地形図の等高線のわずかな乱れ、切れ込みが、離水面と現成堆積面との境界であることが多く、活断層との関連などを踏まえ、空中写真判読や高精度地形図の読図など経験と知識が問われる部分です。

2014年7月19日土曜日

地形判読のメリット - 海成段丘問題 応用地形判読士雑感(4)

 まず「海岸段丘」という設問文は「海成段丘」とした方がよいでしょう。
 地形工学の視点から言えば、(海成にかぎらず河成も)段丘面の問題は開析過程にあることが多い。開析過程が谷による線的侵食だけでなく、地すべりであることも少なくなく、“紛らわしい地形の判読”のための総合的知識・技量を問うこともできる(しかしこれは高度な技術であるので、段丘と地すべりが近接する地域の地形判読は私にとっても難しい)。
 断面を書いていいということにもなっていますが、海成段丘で思うのは「吉川・貝塚・太田先生の土佐湾論文」がシンプルでわかりやすく、基本はそのころから変わっていないのかなとうことです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/37/12/37_12_627/_pdf

 地形図の読図によって真の旧汀線高度が直接求められない理由として、段丘面がローム層や、背面段丘崖の崩落堆などの被覆層により、地表面に露出していないこと、開析によって段丘面が消失していることや、段丘面の傾動や撓曲により変形し、段丘が緩傾斜面になっていることなどが理由としてあげられる。

 ということになろうと思いますが、こういう地形が先に述べてたように、堆積面の地形分類では一番難しい。ただ、段丘崖が地すべりで開析されることも多いだけに、段丘面でも「緩斜面」があった場合、きちんと判読しないと適正な土地利用・防災計画につながらい可能性があります。

2014年7月15日火曜日

地形判読のメリット 象潟問題 -応用地形判読士雑感(3)-

 まず、鈴木先生の読図入門から引用しているだけでどうかと思うのですが、しかもそれが読図演習問題として挙げられているのにわざわざ問題のレベルを低下させて出題するのはいかがなものかと思います。

 試験問題では象潟泥流を既成事実として知っておきなさい!!という問い方をしています。選択肢④は、八郎潟を思わせます。

 鈴木先生の演習問題では、砂丘の浅層の地盤構成、火山砕屑物からなる地盤を推論した上での建設工学的問題点、そのなかにあってもなお直線崖ができる要因はなにかという、地形図内で判読できる地形発達史と建設技術との関連が問われています。

 むしろ、象潟泥流という既成事実を知らなくても、なんらかの大規模な岩屑流であり、数mオーダーの巨礫しばしばで、地盤の硬軟が入り乱れ平坦地の造成には不向きであるなど、実用的な情報を読図でわかる問い方が本筋です。

2014年7月14日月曜日

地形判読のメリット 接峰面図はとても役に立つ -応用地形判読士雑感(2)-

 空中写真による微地形の判読に際して参考になる地図として、不適切なものを選ぶという問題がありました。 (1)地すべり地形分布図 (2)接峰面図 (3)1:25,000 地形図 (4)都市圏活断層図

これは (2)接峰面図とでも言いたいのでしょう。確かに地すべりや0次谷は判読できません。確かにそうかもしれませんが、いかにも素人的です。

 火山の開析前の状態や褶曲構造、地質構造を反映した差別削剥地形等は、むしろ接峰面図の方が判読しやすいことがあります。例えば逆断層の低地側への移動を示すフロントマイグレーションを反映した地形としては、段丘面の逆傾斜であったり、河川の侵食と考えるには直線的で急すぎる段丘崖等が考えられますが、これは空中写真を何枚も横に並べるよりは、ある程度大縮尺の接峰面図を作成して(陰影図でもいいのですが)全体を俯瞰した方が、地形場に応じた地形種を抽出するという意味でも実用的です。
 先の記事に書いた阿寺断層に関しては、いわゆる岡山接峰面図にも顕著に表れていて、見ていて飽きません

 この問題に関してぶっちゃけますと、そう思うのはあなただけでしょ、、

 ちなみに切峰面図という文字もありますが、円の”せっせん”を”切”で習った人と”接”で習った人で世代ギャップがあると聞いたことがあります。

2014年7月13日日曜日

地形判読のメリット -応用地形判読士雑感(1)-

 今年の応用地形判読士の問題で、千屋断層、阿寺断層、跡津川断層、山崎断層のうち、横ずれの顕著でないものはどれか、というような問題が出題されました。おそらく、東北の奥羽山脈を造る千屋断層が、縦ずれの変位が顕著であるといいたいのでしょう。

 しかし、この問題(単なるクイズ)に正解できたからといって、社会基盤整備に役に立つ技術と、なんの繋がりがあるでしょう。

 例えば、王、長嶋、松井、イチロー各選手のうち、比較的ホームラン性の打球の卓越しない選手は誰でしょうと聞いているようなもので、ホームランを打つために必要な技量・体躯、駆け引き等々、本質的な「技術」を「論」じる問題ではないことはわかるでしょう。

 断層の横ずれに関する知識を問うのであれば、判読する際に、なにに着目しているか。例えば、尾根や谷の系統的なずれ、丘陵や山地の斜面が切り離されたオフセット、断層の両側に対面する三角末端面、断層線谷、断層鞍部、谷の屈曲の累積変位など、いろいろ「断層運動の本質」にかかわる現象があります。
 これらを読図でわかるためには、河床縦断が指数関数に近い”正常な”谷や斜面の連続性など、地形発達を読み解かなければなりません。さらには、横ずれ断層の末端部では応力が集中しやすいこととか、断層の分岐(フラワー構造)が形成されやすいことに触れたうえで、跡津川断層と立山トンビ崩れの関係を問うなど、地形災害の本質の理解を進めるような問題であれば、間違えた人も納得できるはずです。