2011年4月2日土曜日

東日本大震災でなかなか報じられない被害 - 地すべり

 原子力発電所と大津波被害は毎日報じられますが、私が長らく携わってきた斜面・渓流の災害についてはなかなか報じられません(渓流はあまりないようですが)。そんななか、今日のGoogleアラートで、今回の地震による斜面・地すべり、谷埋め盛土の被害についての報告が届きました。

 独立行政法人土木研究所 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による地すべり・斜面崩壊調査(速報) http://www.pwri.go.jp/team/landslide/topics/tohokujishin2011-1/h23.3.31.pdf

 これをみる限りでは、2004年新潟県中越地震や2008年岩手・宮城県内陸地震で起こったような地形発達史を劇的に変えるような大規模な地すべりは発生していないようです。やはり奥羽山脈の地すべり地形を形成したのは、直下型地震なんだろうと考えます

 京都大学防災研究所 斜面災害研究センター 仙台市における宅地谷埋め盛土の地すべり
 http://landslide.dpri.kyoto-u.ac.jp/landslides-in-Sendai.pdf

 前者の地すべり地形は、地震や豪雨、融雪をきっかけとして発生した地すべりが、何万年と繰り返されてきた結果です。それは、豊かな生態系・地下水をもたらしました。しかし、後者の方は、本来繰り返されてはならない”URBAN LANDSLIDE”です。特に注目すべきは緑ヶ丘地区でしょう。引用しますと、

 太白区緑が丘では、緑が丘3 丁目と4 丁目で顕著な谷埋め盛土の地すべりが発生した。変動した範囲は広く、約150 棟の住宅が巻き込まれた。この地区は1978 年宮城県沖地震の際にも同様の地すべりが発生し、対策工事が実施されていた。3 丁目地すべりの北部ブロックでは、鋼管杭列の前面で圧縮、背面で引張の変位が認められる。杭は5 列設置されていたので、複数個の浅い小規模なブロックが連続する移動形態となっている。この事と地上に現れた杭頭の変位から推定して、鋼管杭は一定の効果を発揮したが、地表変位を完全に抑止出来なかったことが、広範囲の住宅被害に繋がったと考えられる。
 4 丁目地すべりでは、谷壁に貼り付けられた薄い盛土が変動した。地表変位は3 丁目地すべりに比べて大きい。1978 年宮城県沖地震の際にも同様の地すべりが発生し、地下水を排除するため集水井が施工されたとされる(現地では未確認)。

 とされています。注目度は低いですが、ボディーブローのように効いてくるタイプの災害です。そして、津波と比べると場所を特定しやすくハード面での対策もしやすいと思います。首都圏にも谷埋め盛土は無限にあります。喫緊の課題のひとつです。

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